迫り来る恐怖!真夏の表妙義縦走
苗場山の翌日は、妙義山へ行ってきた。
ネット情報によると、西穂〜奥穂の縦走路にも匹敵するほどのスリルな岩場を楽しめるとか。
一体どんな山なんだろうか?気になってはいるが、今まで行くことの無かった山。
今回ついに登る機会がやって来た。
妙義山について
妙義山はいまいちイメージが沸かなかった。
ひとまず大変なルートで「表妙義縦走」と、「裏妙義縦走」があるらしい。
表妙義縦走
表妙義は、妙義神社から入って、相馬岳、金洞山と縦走していく。核心部は「鷹戻し」と呼ばれる場所で約50mの高い岩壁を鎖を掴みながら突破しなければいけない。
裏妙義縦走
裏妙義は、相馬岳や金洞山のある表妙義の北西を流れる、「中木川」を挟んだ対面に位置する山塊である。国民宿舎跡からスタートし、丁須の頭から烏帽子岩を越えて、谷急山をピストンして戻ってくるのが一般的なようだ。
今回のルート
大体概要は掴めた。どちらも興味がある。
今日は「表妙義」、明日は「裏妙義」を行こうか。と相方と話し合った。
日 時 2018年8月16日(木)
山 域 関東・妙義山(最高峰:相馬岳1,103m)
目 的 行ってみたい山に登る
コース 5:30妙義神社ー6:50大の字ー8:40天狗岳ー9:20相馬岳10:15ー11:40掘切分岐ー12:00中間道合流ー12:15四阿ー12:48県道196号ー13:15妙義神社
標高差 680m
累積標高 (上り)949m・(下り)944m
天 気 晴れ
人 数 2人
(結果的には、途中で雨が降ってしまった為に金洞山までは行けなかった。)
国土地理院地図(YAMAPログ)
アプローチ
前日の夜、スタート地点の妙義神社へ向かう。
車で行けるところまで進むと、妙義神社の鳥居の最も近くに「東雲館」の有料駐車場があった。旅館の女将さんに停めて良いか聞きに行くと、快よくOKしてくれた。
トイレが無いので、夜は「道の駅みょうぎ」で過ごして翌朝おいでとの事だった。
女将さんにお礼を言い、その通りに過ごすこととした。
翌朝東雲館の駐車場に移動。駐車料金は100円だ。
妙義神社からスタート
準備を進めて出発。
鳥居の前で帽子を脱ぎ一礼。
江戸時代に作られたという、妙義山の石段を登ってゆく。
石段の下に木の根が伸びていて、階段の形が変形していて歩きづらかった。
長い階段を登りきって、随心門をくぐる。この門には神域に邪悪なものが入るのを防ぐ神様がいるそうだ。
左に曲がり、また右手に伸びる階段を登るといよいよ本殿がある。
てっきり本殿まで直進で行けると思ったのだが、意外と左へ右へと曲がって複雑な境内であった。
邪悪な者が本殿に辿り着かないようにしているのだろうか?
そこから右手に曲がり、階段を下っていくと妙義山の登山口に到着した。
登山届けを記入してポストに投函。
戸隠山と同様に事故が多いこと、危険な事が強く強調されていた。
気を引き締めて出発する。
本来の登山口は整備中との事だったので、案内に従い巻き道登山道から進む。
鎖場出現
標高が低いのか、すぐにジットリと汗をかく。
今日は、晴れ。暑すぎるくらいである。
最初の鎖場が現れた。湿った岩に泥が付いている。見た感じ滑りやすそうだ。
ピカピカの鎖が垂れているので、しっかり握り、慎重に登る。
大の字
ほどなくして、大の字分岐に。
大の字へ行くには、またまた岩をよじ登る。ここの岩はステップが切り込まれていて登りやすかった。
上までいくと、ハリウッドの文字のように「大」の字が。
奥の院
大の字の分岐まで戻り、いよいよ妙義山の稜線へ向けて登る。
奥の院と呼ばれる場所に到着。
巨大なチョックストーンが立派な祠の役割を果たしていた。
はしごがかかっているので近くまで行ってみる。御神体があった。
上部にある岩の隙間から少し日が差し込み、御神体がぼんやりと光っているように見える。特別な雰囲気のある場所だった。
ちなみにかかっているハシゴがそろそろ怪しい予感。
錆びついて、そのうちボキッと折れてしまうような気がした。
難所あらわる
奥の院の脇にある鎖場から登る。
ここも湿っていて泥っぽい。見るからに滑りそう・・・。
下手にゴボウで登ると本当に落ちそうだ。
鎖場のピッチが長く緊張する。
幸い足場は豊富であった。落ちる事なく無事突破。
稜線に到着
奥の院の鎖場を登りきると、妙義山の稜線に到着した。
ビビり岩
「ビビり岩」なるものが現れる。
ここで初めて展望がひらけた。
ビビり岩の上からみる関東平野は絶景だった。
北側の展望にはゴツゴツの岩壁帯が広がっていた。ロッククライミングが出来そうな岩壁だ。登る人はいるのか調べてみたが裏妙義の「木戸壁右カンテ」以外は無さそうだった。信仰の山はクライミング禁止なのかもしれないが、そのうち登山大系を買って調査してみようかと思う。
背びれ岩
背ビレ岩。なんてことはない鎖場だったが、ふと、岩に打ち込まれているボルトを確かめたら、かなりユルユルだった。テンションかけたら100%落ちる。
大のぞき
大のぞきからの鎖場下降は長かった。
足は満足に乗っからないので、ソールのフリクションを効かせて降りた。
樹林帯の稜線
稜線歩きはやはり楽しいが、妙義山は標高が低いので、樹林帯も多く、アップダウンも多い。どこどなく、私の地元の「沼津アルプス」に似ている雰囲気だった。
血まみれ事件
ふと服をみてびっくりする。
明らかにお腹の部分が「血まみれ」だった。
実は、結構序盤から赤いシミは付いていて、その時もドキッとしたのだが、
痛みは全く無いので、いつか食べたミートソースがシミになっているだけだと思っていた。
恐る恐る服をめくって確認すると、おへその隣あたりに蚊に刺されたような跡があって、そこから出血していた。しかも拭いても拭いても止まらない。
ちなみに正体はヤマビルだったのだが、私はこの不可解な現象に遭遇するのが初めてだったので、念のためポイズンリムーバーを使ったりして、結構慌てていた。
その後、稜線を歩いているときに、今度は手の甲にヤマビルが飛びついてきて、その時に全てを理解することができた。そのヤマビルは相方に向けてデコピンで飛ばした。
「妙義山」といえばメジャーな山であるのに、今まですれ違った人は単独のトレイルランナー1人のみ。
おかしいな、連休なのにどうして人が少ないのか?
やっと原因が分かった。夏の妙義山は「ヤマビル」の住処だったからだ!
他の登山者は敬遠して登らないだけで、私たちは知らずにノコノコとやってきて、まんまと「ヤマビル」の獲物となってしまったのだ。
まさかの刺客に襲われて驚愕したが、出血の正体が「ヤマビル」だったことに安堵する。
もし毒のある虫に噛まれていたのなら、それこそタチが悪かった。
妙義最高峰・相馬岳
ついに山頂標識のある「相馬岳」に到着。
ここで朝食タイム。
ちょうど太陽に雲がかかり日が陰る。30分ほど時間をかけて優雅に食べる。
相馬岳山頂から標高200m程を急下降する。
こちらも湿った岩場のクライムダウンで、気は抜けない。
掘切分岐より下山
「掘切」と呼ばれる最低鞍部へ到着した。
先ほどよりポツポツと小雨が降っている。
ヤマテンでは午後から崩れるとの予報が出ていた。
雨が降るとカッパが濡れるし、やっかいだ。この「掘切」分岐から下ろうか話し合う。
いよいよこの先に妙義山一番の核心部、「鷹戻し」があるというのに。
なんだか勿体無いので「鷹戻し」だけピストンする案も出たが、ここからまだ40分も歩かなければいけないのはちょっと・・・。
ということで、潔く計画変更して下山を開始する。
しばらく下ると「ふれあいの道」と呼ばれる、登山道と合流する。
妙義山のマップでは「一般登山道」とされている場所だ。今まで歩いていた場所は「上級登山道」の扱いになっている。
崩落して通行不能という情報のあった「タルワキ沢」方面は避けて、ひたすら降って県道196号から妙義神社に向けて歩く。
嫌な予感
ふと膝の近くに違和感。だいたい予想は付いているが。そっとズボンの上から撫でてみる。プニプニした感触。
とりあえずそのままにしておいて、駐車場に付いたらトドメをさすことにした。
駐車場へ到着
駐車場に無事に到着。
登山靴を脱いで撤収準備をしていると、東雲館の女将さんがちょうどやってきた。
お疲れ様と声をかけてくれる。
ここら辺は夏はヤマビルいるけど、大丈夫だった?と聞かれた。
なんとタイムリーな話題だ!
「今、ちょうど足に連れてますよ。」って言って見せてみたら。
「ひぇ〜!」と言って震えていた。笑
人の足にくっついているのは初めて見たそう。
女将さん情報によると、妙義神社や相馬岳近辺など、妙義の東側はヤマビルの生息地であるとのこと。なぜだか西側の金洞山や石門あたりはピタリとヤマビルは居ないらしい。
退治
さて、その後、腰を据えてヤマビル退治に取り組む。
相方には動画撮影を依頼しておいたが、予想以上にグロテスクになってしまった為、お蔵入りとした。
「死海の塩」をヤマビルに振りかけてみる。
しばらく反応なし。「ん?効果ない?」と思った矢先、ヤマビルがブクブクっと口から血を吐き出した。私の足に、一筋の血が流れる。
しばらく張りつこうと頑張っていたヤマビルだが、程なくして、ついに足からぺろっと剥がれ落ちた。
その後も地面の上で悶えている。
最後の力を振り絞って移動していたが、やがて力尽きてしまった。
ヤマビルが血にまみれていてグロテスクだ。私の血なのだが、まるでヤマビルの血に見える。なんだか残酷な事をしてしまった気がする。
で、足の状態はというと「血が止まらない。」
なぜ?と思ったが、帰宅後ネットで調べたら、ヤマビルの注入した「ヒルジン」と呼ばれるエキス、これをヤマビルが剥がれた後に、傷口から指で押し出さなければいけないらしい。血液が固まらない酵素であり、放置すると出血が長引くとの事だった。
原因
今回の襲撃の原因として私のファッションにも問題があったのかもしれない。
縦走時の予備服として持ってきていた、ジャージとシャツ1枚という、ユルい格好をしていた。考えてみれば、襟元もお腹周りもスキだらけだった。
もう少し襟周りの狭い服を着ることや、インナーを着用すること、ズボンの裾をすぼめるだけでも被害を抑えられたかもしれない。
あとは、私が2番目を歩いていたことだ。
お化け屋敷と一緒だ。ターゲットを襲うにあたり、先頭が来たら狙いを定め、2番目で襲うのだ。ちなみに3番目は追いかけられる。
実際に相方は1箇所しかやられていなかった。
私は、お腹、背中、足3箇所の計5箇所もやられてしまったからだ。
今回のまとめ
今回、表妙義の縦走を試みたか、あいにく、途中下山となってしまった。
妙義山は「日本三大奇景」の一つであり、特に金洞山の麓にある石門群は見応えがあるらしい。今回、その場所が一番気になっていたので、行けずに残念だった。
夏は暑いしヤマビルがウヨウヨしているので、紅葉の秋に行ってみたら快適かもしれない。
後から知ったことだが、裏妙義の南西に「高岩」と呼ばれる場所があるらしい。
距離は短いものの、最高峰・雌岩へ至る核心部の3段30mチムニーは危険らしい。
そして頂上から見る景色は素晴らしいとか。
もう少し早く知っていれば、寄り道していたかもしれない・・・。
なにはともあれ、今回はまた1つ、憧れの山に登ることが出来て良かった。