明神岳主稜縦走!北アルプス縦走途中断念
お盆休みは有給含めて9連休を頂いた。
半年前から温めていた夢の計画「北アルプス南部8の字周回」を実行したが
2日目にして断念。相方が脱臼をしてしまった。
北穂高小屋の方にお世話になり、どうにか無事に下山することができた。
8泊9日の予定が、2泊3日と大幅に短くなってしまったが、歩きたかった明神岳主稜は歩くことが出来たし、中身の濃い3日間で、良い経験になったと思う。
日 時 2018.08.11(土)~08.13(月)
山 域 北アルプス南部
目 的 北アルプス南部縦走(途中断念)
コース 1日目:6:40河童橋ー7:50⑦番標識分岐ー12:20明神岳5峰
ー14:00明神3峰手前(幕営地点)
2日目:5:45明神3峰手前ー10:00前穂高岳ー11:00紀美子平ー13:00奥穂高岳ー14:00穂高岳山荘ー19:00北穂高小屋
3日目:(下山開始)6:40北穂高小屋ー9:45涸沢小屋ー14:00徳澤園ー16:10河童橋
標高差 1,692m
累積標高(上り・下り) 2,578m/2,571m
天 気 晴れ
人 数 3名(紀美子平より2名)
YAMAP・国土地理院地図より
1日目:上高地〜岳沢〜明神3峰手前
いつもの河童橋からスタート。岳沢へ向かう。
⑦番標識のある場所が、明神主稜への取り付き。
⑦番標識の向かいに明神へ向かう。予想以上に顕著な踏み跡があった。
その前にザックをデポして天然クーラーに寄り道。この⑦番標識の場所は、正規ルートを正面に見ると、右側に明神への踏み跡、左側にも謎の踏み跡があるので、意外と間違えやすい。
樹林帯の急登
7:50、水分補給していよいよ明神岳5峰に向かう。
ここから明神岳5峰までは標高差1,000m。長い道のりだ。
樹林帯の急登が続く。時折藪が現れる。
水に濡れていて気持ち悪いし、暑いし、虫がうるさい。
荷物が重くて疲れる。
標高600m程登ったところから岩がちらほら現れた。
9:50。⑦番標識から2時間経過。急登&重いザックに心が折れそう・・・。
後8日間も歩き通せるのだろうか、いや、稜線に着いたらきっと楽になる!!
ロープが張ってあるが信用してはいけない箇所もたまにあった。
ボロボロで、手で押したら倒れそうな頼りない木に結んであった。
これは私でもへし折れる自信ある。
踏み跡も明瞭で、一般ルートを進んでいる気持ちになった。
ただ、ロープだけは信用ならん。
11:30、やっとこさ樹林帯を抜け、5峰に近づいたが、残念な事にガスガスで展望は望めず。
今日の私はなんだか調子が悪くて、ペースが上がらず仲間に迷惑をかけている気がする。時間を見ると昼も近くなっている。仲間で相談して行けるところまで進む事にした。
午後からの雷を心配したが、ヤマテンの予報では今夜は大丈夫そうなので稜線上のどっかでテントを張ることとした。
明神5峰へ
12:20、5峰山頂に到着。ウッドシャフトの古いピッケルがあった。
引き続き、前穂方面に縦走を続ける。
ガスガスで明神主稜線の特徴が掴みにくい。ただひたすら岩稜を歩く。
浮石はもちろんそこかしこにあるので転がさないように歩く。
先ほどすれ違った単独の男の人は4峰付近で幕営していた。良さそうな場所で羨ましい。笑
4峰ピーク(多分)
3峰手前で幕営
いよいよ時間も14:00になり、3峰手前で幕営する事にした。
稜線上にある岩の裏に平らな場所があった。河童橋方面から吹き上げてくる風がちょうど岩に阻まれて風が弱まる良い場所だった。
時折ガスが晴れて素晴らしい展望が見えた。
あとで知ったことだか、この日、西穂高で滑落死亡事故が起きてしまったそうだ。
明神3峰に向かって「ヤッホー!」と叫ぶと、面白いくらいにやまびこが返ってきてしばらく遊んだ。
そのあとプーリーを使っての引き上げの練習をして就寝。
夜は風がごうごう唸り、一時雨も降った。
今回も軽量化の為ダウンジャケット・ダウンパンツにシュラフカバーという組み合わせだったが、テントだったので全く寒くはなく快適だった。
2日目:明神3峰〜前穂〜北穂
翌朝、一段と霧が濃くなっていた。テントを撤収し5:40出発。
3峰を巻くようにして進む。
途中で、引きちぎれたザイルの残骸があった。
どうしてこうなった。
その後も、2峰に向けて、岩を巻いたりクライムダウンをしながら進む。
明神名物・懸垂下降
いよいよ2峰の懸垂下降地点に到着。
50mロープを2つ連結させて1回で下降する事にする。
何があるか分からないのでバックアップもきっちり。
高度感は抜群。
以前行った、小川山の涸沢岩峰群2峰でもここと同じくらいの30m程の懸垂下降をやったが、同じ距離でもこちらの方が高度感がある。
多分樹木がないからスケールが大きく感じるのだと思う。
その後もひたすら進む。ザイルを使ったのは懸垂下降のところだけだった。
ついに前穂高も近づいてきた。稜線の雰囲気が変わる。
歩きやすそうな稜線に内心嬉しくなった。
ビクトリーロードのような稜線漫歩。晴れてればきっと最高だったろうに。
前穂高岳へ
明神分岐に到着。一般ルートと合流。
ザックをデポし、登り1分くらいで山頂へ。空身になったら羽が生えたように軽くなった。思わず前のめりに転びそうになる。
待ちわびた、前穂高岳山頂へ。前穂は好きな山だ。
以前、秋に登った時の展望が素晴らしく綺麗で感動した。今はガスガスだけど。
まだ春と冬の景色は見た事がない。
春夏秋冬でいつが一番綺麗なのかを自分の目で確かめに行くのが密かな夢だったりする。
その後、紀美子平まで降る。
途中でツアーのマダムに「クライマーはやっぱりスイスイ降るねえ」と言われてちょっと嬉しくなった。いや、明神岳でクライミングとか一切やっていないけどね。笑
一気に賑やかな雰囲気になり、なんとなく安心する。
ガスが晴れて明神の峰々が見えた。
岳沢も。
西穂へ向かう稜線も。
吊尾根を越えて奥穂高岳へ
ここでヤマテンをチェックすると、どうやら午後から激しい雷雨になる可能性もあるそう。現時点で11:00。天気を気にしつつ吊尾根へ向かう。
ここで、山仲間の1人は翌日仕事がある為お別れ、ここからは相方と2人パーティーになる。
南稜の頭。バリエーションの奥穂高南稜も行ったことがないのでいつか行ってみたい。
吊尾根は全体を通してトラバースが多く楽ではあったが、奥穂側には鎖場多く気が抜けない場所も多々あった。
以前、北アルプスの遭対協の人が南稜の頭付近での事故が多いと教えてくれたが、それもわかる気がした。
奥穂高岳へ到着!
穂高岳山荘へ向けて降ると、西穂との分岐が。
ジャンダルムが見える。右方向に続いているのがジャンダルム飛騨尾根だ。
今回狙ってた場所だったが、叶わなかった。
前穂高岳北尾根。右側の一番高いピークが1峰、つまり前穂高岳山頂。
1峰〜3峰は連続して連なっている。3峰の登りが北尾根の核心だ。
続いて綺麗なおにぎりが4峰。尖っていなくて平らなのが5峰。その隣が6峰。
6峰には「たぬき岩」というたぬきが座ってるように見える岩があるが、ここからだと見えにくい。北穂高岳からはよく見える。
涸沢カールから5・6のコルへ登り、北尾根へ取り付くことができる。
向こう側にある奥又白池から5・6のコルを越えて涸沢入りすることもできる。
北尾根は形も格好良くて、私のお気に入りの尾根だ。
北穂高岳山荘へ向かう
穂高岳山荘へ無事に到着。この時点で14:00を回っている。
さて、どうするかという相談。
本当は疲れていたし、ここで幕営するべきだったのかもしれない。
でも本来の予定では今日は北穂高山荘へ行っているつもりだった。
天気はまだ持っているし、明日の行動を楽にするためにも、ここはパスして北穂高山荘へ向かうことにした。
シャリバテ
涸沢岳への登りが辛い。3歩歩くと息切れがする。おかしいくらいに体が疲れる。
空身のマダム2人が楽しそうにおしゃべりしながら私たちを追い抜いていく。
羨ましい・・・。
やっとのことで涸沢岳山頂に到着。平均コースタイムの2倍時間がかかった気がする。
山頂から外れたところで休憩する。
バタッとへたり込んでしまう。よく考えたら、行動食をろくに食べずにここまで来ていたことを思い出した。これがいわゆる「シャリバテ」??
食欲は全く無いけど、無理やりプロテインバー(ベイクドチョコ味)を食べる。
お口直しに私の好物のミレービスケットもつまむ。
深呼吸して出発。
しばらく経つと、体が楽になって普通に歩けるようになった。
やっぱりシャリバテだったのかも。食事をおろそかにしてはいけないなと深く反省した。
(家に帰ってから調べたら「スポーツ性貧血」というのもあった。症状としてはこっちの方がしっくりくる気がする。鉄分も意識して摂取したいと思った。)
相方が脱臼
滝谷ドームの頭を通過して、いよいよ北穂高岳が近づいて来た時、アクシデントは起った。
相方が急に「ちょっと待って」と言って止まった。「脱臼したかも、ちょっと待って」と再び言った。嫌な予感がした。
その後、ジワジワと痛みがきたようで、左肩を抑えて呻いている。完全に脱臼だ。
ひとまずザックを降ろすのを手伝う。
相方は以前脱臼していて、脱臼癖が付いていたようだ。
今回はおそらく27kgくらいの荷物を背負っていたのも原因かもしれない。
普通に岩を登ろうとしたら、腕を変にひねって外れてしまったそう。
何が最善なのか、グルグル悩む。
相方はザックが背負えないので、空身で歩いてもらうしかない。
でもこんな状態で歩けるのか?
私がザック2個持ちで運んだ方がいいとは思うけど、重くて厳しい・・・。
ザックは置いて行くべき?
もしかしたら他にもっと良いやり方があるかもしれない。
その時、後ろから2人組のクライマーが追いついてきた。
先ほどすれ違った二人で、滝谷を下から詰めて第四尾根を登ってきたクライマー2人だ。
話してみるのが良かったのかもしれないが、なんとなく言い出しづらくて、挨拶をして見送ってしまった。
いよいよ歩き出そうと思った時に、ふと良いことを思いついた。
北穂高小屋に電話をする事だ。なるべく相方には身体的負担をかけて欲しくない。
とにかく一度小屋に電話して話してみるのがいいかもしれない。
相方に提案して、相方から電話をかけてもらった。
すると、「小屋から勝手に救助に行く事は出来ないので、正式に救助要請をしてもらわなくてはいけない」と言われた。
「救助要請」という言葉に緊張する。本当にしてしまっていいのか。もう、それしかないのだろうか。
しかし、その後に歩けるかどうか聞かれ、相方が「空身ならなんとか歩ける」と答えたら、「それでは、荷物持ちのお手伝いで一人向かわせます。無理せずゆっくりこちらへ歩いてきてください。」と言われた。
小屋の人の優しさに救われた。
結局、救助要請はしなくて済んだ。本当にありがたいと思った。
やるべき事は決まった。片腕で歩く相方をサポートしながら私も北穂高小屋へ向けて歩き出す。時折手を使わなければ登れない箇所がいくつかあったが、上から引っ張り上げた。
そして、ついに天候悪化の兆しが見え始めた。ポツポツと、雨が降り始めた。雷鳴が遠くでゴロゴロと鳴っている。気持ちが焦る、お願いだから小屋に着くまで来ないでほしいと思った。
その時、前から小屋の方が歩いて来た。荷物の場所を伝えると、取りに行ってくれた。
相方のザックは重いので、なんだか申し訳ないと思ったが、そんな気持ちは杞憂に終わった。ものの数分で今度は後ろから追いつかれた。
相方の荷物を背負っていてるのに、もの凄いスピードだ。
今度は小屋へ三角巾を取って来るから、ゆっくり歩いて来てと言われた。
そして、またまた凄いスピードで歩いて行ってしまった。改めて小屋の方の凄さを実感した。かっこよすぎる・・・。
激しい雷雨
北穂南稜分岐を通過して北穂高岳へ向かう。
そしていよいよ恐れていた雷雨が来てしまった。空一面がパッと白くなり、すぐにゴロゴロと大音量が響く。雨はすでに土砂降りだ。
私は雷が嫌いだ。怖すぎる。早く小屋へ逃げ込みたくてしょうがない。
私がビビってるのを見て相方が「先に小屋へ行っていていいよ。」と言ってくれるが、相方を見捨てるのは流石に出来ないと思った。
雷が当たらない事を祈りながらひたすら歩く。
そこで小屋の方が再び迎えに来てくれた。三角巾を取り付けようと思ったが、ここでやるよりは、後少しで小屋だからそのまま行った方がいいとの事だった。
北穂高岳山頂に到着。もう少しで小屋だ。
瞬間的に、辺り一面が昼間のような明るさに光る。雷鳴が鳴り響く。
焦る気持ちをどうにか落ち着けて、ゆっくり歩く。
そしてついに安全地帯へ。北穂高小屋に到着した。
脱臼の手当
私は一度ザックを下ろして、小屋の方の案内で、小屋内へ入る。
これから脱臼の処置を行うとの事。
ただ、脱臼をはめる事は、医療行為になるので本人の許可が必要らしい。
相方は迷うことなくお願いする。
痛かったら我慢せずに言ってね、と断ってから、小屋の人は左腕をガシッと掴んで脱臼をはめにかかる。
相方がかなり苦痛の表情を浮かべている。
ここで「痛い」なんて言っても治らないし、どれだけ痛くても結局ははめるまで我慢するしかない・・・。心の中で頑張れとエールを送る。静かに見守った。
そしてついにパキッと音がして骨がハマった。
痛みはあるが、先ほどよりはるかにましになったとのこと。
その後、三角巾で吊るしてもらい、今晩は小屋に泊まる事にした。
小屋の人に手伝ってもらい、乾燥室に荷物を運び込み、受付を済ませる。
すると先ほどのクライマー2人も入って来た。当初はテントの予定だったが、あまりの雷雨に逃げ込んで来たそう。
怪我の事を知って、何も知らずにごめんねと言われた。
こちらが隠してしまったのだから何にも悪くない。やっぱりあの時話しとくべきだったなぁと思った。
夜は自炊で済ませる。
雷は落ち着き、北穂高小屋の下に広がる雲が時折ピカピカ光っていた。
雷を上から観察するのも初めてだった。
眠くてたまらないが、頑張ってラーメンを食べて、就寝。
3日目:北穂〜涸沢〜上高地
翌朝はゆったり起床。外へ出ると、霧雨が降っていた。
小屋で朝食をいただき、他の人が先に出ていくのを見送り空いた小屋で身支度を始める。
今後の行程を相談する。もう結果は分かり切っている事だが、やっぱり少し諦められないところがあった。
当初の予定、滝谷はもちろん無理。天候的にも無理。
その後は大キレットを超えて槍ヶ岳まで行く予定だった。空身なら行けるかもしれない。でも片腕で歩くリスクはかなり高いし、何があるか分からない。きっと客観的に見たら無謀な事だ。やっぱり今日は大人しく下山するしかない。
小屋の裏に大キレットを見に行った。ガスが途切れてその姿が現れた。
残念だけど、また来るよ。
小屋の方々にお礼を行って、涸沢カールに向けて下山を開始する。
質量のある荷物は私が担いだ。登りだときついが、下りならなんとかなる。
相方は右肩だけでザックを背負う。片腕で担ぐにはきっと重くて、負担も計り知れない。
昨日はスルーした北穂高岳の山頂標識。
たまたま人がいて、シャッターを押してくれた。
南稜に取り付き、下山を開始する。
相方はストックを使って上手に下山する。昨日よりも歩きに慣れている様子。
相方曰く、「左腕が使えないから、右腕がいつも以上によく動く」そう。
どうしても降れないところは肩を貸したりした。
順調に高度を下げていく。
北穂高岳東稜が見える。取り付きに向かうパーティーがちらほらいた。
9:45、涸沢小屋に到着。無事に南稜を降ることができて安心した。
小屋内でおでんをいただき小休止する。
涸沢カールのテント場所は空いていた。
続けて上高地に向けて下山を開始する。ここからはかなり歩きやすく、先ほどより格段に楽になった。
ただ距離が長いのだけが辛い・・・。
憩いの休憩広場まで到着。
横尾を過ぎ、新村橋を通過。奥又白池も、いつか必ず行きたい。
徳澤園でソフトクリームをいただき、足を進める。
果てしなく長い林道。肩と腰が痛くて辛かったが、無事に河童橋まで到着した。
バスターミナルへ向かうと、バス待ちの長蛇の列が。
バスは諦めてタクシー乗り場へ。ジャンボタクシーに相乗りさせてもらい、沢渡温泉の駐車場へ無事帰着。
今回の感想
今回、途中アクシデントに見舞われ、途中下山を余儀なくされてしまった。
ただ、不運ではあったが、今回こういう目にあったのはラッキーだったのかもしれない。
今回はたまたま一般ルートでの出来事で、電波は繋がるし、北穂高小屋の人にも大変お世話になった。これがもし、バリエーションや雪山での出来事だったら・・・。
そんな中で自分は対処できるのかも分からない。
山はまだまだ奥が深いし、本当に何があるか分からない。
今のままだと、いざという時に全く歯が立たないと実感した。
どんな時でも対処できるようにより一層知識も深めなきゃいけないと思った。