Wakaの週末ハイキング- 山の歩き方 -

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危険だけど最高の景色だった!断崖絶壁を行く~秘境・黒部峡谷 下ノ廊下~

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私が山が好きになって一番最初に「行きたい」と思った場所

それが黒部峡谷 下ノ廊下です。

人生の最終目標

私の山登りにおける最終目標、それが黒部峡谷 下ノ廊下でした

私は山岳会へ入会していますが、その理由というのも、いつかここへ行くのが夢だったからです。

山の技術を覚えて、経験を積んで、60歳までには行くぞ!と密かなる目標を立てていました。

それが、なんと、ついに今年行ける事になりました。

山岳会に入って良かったです。そして、こんな貴重な機会を与えてくださった山岳会の先輩方には感謝しております。 

憧れの「黒部峡谷 下ノ廊下」

前日夜出発の一泊二日。

天気は曇り。天気予報によると雨となっていましたが、なんとか持ちこたえてくれました。9月下旬、下界の気温はまだまだ暑いですが、渓谷沿いを歩き始めるとかなり涼しかったです。

日程

2016年9月24日(土)〜

2016年9月25日(日)

目的地

扇沢〜下ノ廊下〜阿曽原温泉〜欅平駅〜宇奈月温泉駅

私の目的

 憧れの下ノ廊下、美しい峡谷の景色を堪能する

天気

曇り

メンバー

9人

 

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国土地理院地図

1日目は扇沢ロッジ(扇沢駅)から阿曽原温泉小屋まで。赤ラインを歩きました。

2日目は宇奈月温泉駅から宇奈月温泉駅まで。赤ラインは歩き、青ラインはトロッコです。

二日間の総歩行距離は45km。

ピークを目指す訳ではないので、下ノ廊下自体にアップダウンはほとんどありませんが、欅平へ降りるまでのしじみ坂はなかなかの急勾配です。

とにかく、距離が長い為に、私自身も毎週山に登ってトレーニングしていたつもりですが、終盤には足がパンパンになりました。

扇沢駅から出発

地元を出発し長野県大町市にある「扇沢駅」に向かいます。

車は回送サービスを依頼し、「宇奈月温泉駅」まで運んでもらいました。 

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朝6:30頃になると、駅も沢山の観光客・登山客で混み合います。

始発でトロリーバスに乗車し黒部ダムまで移動します。

迫力満点の観光放水「黒部ダム」 

毎秒10t以上の水が放たれている「観光放水」

その規模の大きさに驚きです。家の風呂の湯船が即座にたまってしまいます。

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今回は、時間があまり無いため、ダム展望台のみからの見学です。

日没までに必ず阿曽原温泉小屋に到着したいので、手早く記念撮影。

そしてついに歩き出す。

ここからは登山の世界が始まります。

「日電歩道」

まず歩くのが、「日電歩道」と呼ばれる場所です。

黒部ダムから仙人ダムまでの区間の名称です。

登山道に入り数十分、まずは樹林帯を歩きます。

木々の隙間からチラリと黒部川が見えます。 

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足元は湿っているため、滑りやすい事この上ない。

写真撮りに夢中になりすぎて、一度滑って転んでしまいました。

序盤のまだ高度の無い場所だったからよかったものの、さらに険しい場所で転び、万が一滑落してしまったら、怪我だけでは済みません。 

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観光客だらけだった「黒部ダム」とはガラリと雰囲気が変わり、荒々しく流れて行く黒部の川を間近に見ながら進んで行きます。

最初は川と同じ標高を歩いていきますが、少しずつ高度を増していきます。

次第に樹林帯の景色も変化していきました。

断崖絶壁を歩く 

気づけば、高度も十分高くなり、断崖絶壁を歩いています。

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壁にワイヤーが取り付けられているものの、もう片方は絶壁です。

黒部の水流が、ごうごうと勢いよく流れているのが見えます。落ちたら流石にマズい場所です。

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丸太の橋を渡ります。

新品で頑丈ではありますが、濡れている場合はスリップ注意です。

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はしごを登ったり、川べりまで降ったり。

基本的に平坦な道のりですが、危険です。

河原付近は石がゴロゴロしていて歩きづらかったです。足を挫かないよう気をつけました。

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歩いてきた道を振り返りました。

奥からずーっと崖に横の線が引かれています。ここを歩いてきました。

黒部峡谷の名所「白竜峡」

周りの雰囲気が少し変わりました。

「白竜峡」に到着です。 

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岩が白い花崗岩に変わりました。

川幅もグッと狭まります。ここは特に急流になっているため水の音も大きく、恐怖心も煽られます。 

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眼下に急流を捉えながら、慎重に進みます。

怖い!怖いですが、あまりの絶景に見とれてしまいます。日本にこんな場所があるなんて。

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花崗岩の岩と、水の色が実に美しい。こんな贅沢な場所を歩けるなんて。

普通だったらこんな場所、危険で歩けません。

整備されていることに感謝です。

「十字峡」 

「十字峡」に到着しました

黒部峡谷の中で最も有名な場所です。 

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剱沢と棒小屋沢の二つの沢が、黒部川本流と合流しています。

三つの川が同じ場所に合流している光景は、非常に珍しい。

一度見に行って、その目で確かめて欲しい、そんな場所でした。

 これは十字峡展望台から撮影です。登山道から分岐して行くことができます。

急勾配なので注意が必要です。

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登山道に戻ると、看板と、その先に続く吊り橋がありました。

ここからも「十字峡」を眺めることはできますが、やはり展望台まで足を運んで欲しいです。

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「十字峡」を過ぎると、再び高度が上がってきます。

気づけば、かなり高度感のある場所に。

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ここまで来ると、浮石も少なくなってきて多少歩きやすくなりました。

「S字峡」

「S字峡」が現れました。

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その名の通り、岩壁が複雑に入り組んでおり、まるでS字のようになっています。

流れの急な黒部の本流が思いっきり岩壁にあたり、白い飛沫が発生しています。

この場所は、これからも変化を続けていくのだと思います。

数十年後、数百年後、どんな形になっているのでしょうか。

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「水平歩道」

「水平歩道」に入ります。仙人谷ダムから欅平までの区間の名称です。

仙人谷ダム 

仙人谷ダムへ到着しました。今まで歩いていたのは「日電歩道」ここからは「水平歩道」となります。

ダムの中を突っ切って進みます。

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f:id:vivid_783:20170707053346j:plain日本一すごい発電所 

突然建造物が現れました。

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「関西電力 黒四発電所」とあります。

日本一建設が難しかった水力発電所です。

下ノ廊下のど真ん中に位置するこの建造物。

もともと「日電歩道」「水平歩道」は、この発電所の建設や巡視路に使用する目的で開拓されたものです。

今でも危険で大変な道ですが、昔はさらに大変でした。

今よりも整備されていなくて、頼りない道を工事用の資材を担いで運びます。

命を落とす人も多数。工事は困難に困難を極め、過酷な当時の様子は映画「黒部の太陽」になっています。また「プロジェクトX」でも放映されました。

阿曽原温泉小屋

ついに阿曽原温泉小屋に到着しました。 

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ここの名物といえば「阿曽原温泉」です。

小屋の名前にもなっています。

ここはアプローチの厳しさから「日本一危険な温泉」とされています。

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温泉は1時間おきに男女交代、20時以降は混浴タイムとなっています。

ここの温泉、写真はありませんが思いっきり屋外です。猿が一緒に入ってきそうな場所にあります。

小屋からは約10分歩きます。サンダルだとキツいらしいので、登山靴を履いて出発。

女子タイムに入りましたが、結構人が居て安心しました。

心配でしたが、覗かれるような場所でもありませんでした。

石鹸があったので、軽く体を洗い湯船につかります。髪は洗えないのでそのままです。予想外にいい湯でした。 

温泉の秘密「高熱隧道」

「高熱隧道」は阿曽原谷付近にある160℃を超える高温の岩盤です。

仙人ダム建設の際、資材運搬用のトンネルを掘っている途中にこの岩盤に行き当たり、工事が難航したそうです。(仙人ダムの場所は上の地図を参考に)当時の出来事は吉村昭著「高熱隧道」という本になっています。

温泉はこの隧道の坑口のすぐ隣にあるので引くことが出来るそうです。

欅平駅に向けて出発

 二日目は4時に起床。テントを撤収し5時に出発しました。

まだ外は真っ暗なのでヘッドランプを付けての移動です。

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ハードなはしごがあります。朝から体にこたえました。

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「大太鼓」

水平歩道の名所といえば「大太鼓」です。

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ダムへ資材を運ぶためにダイナマイトを使って道を作ったそうです。

道がくりぬかれる前は、岩壁に打ち込んだワイヤーから丸太をぶら下げて、その上を歩いていたそうです。なんと恐ろしいことか…。

暗闇のトンネル

途中、ヘッドランプ必携のトンネルを歩きます。

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中は真っ暗。足元は水が流れて入りバチャバチャ進みました。

もし1人だったら少し怖いかもしれません。

歴史の詰まった道

欅平まで、結構長い間「水平歩道」は続きます。

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振り返ると、崖に対して一直線に引かれた線が見えます。

今まで歩いてきた道です。

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トロッコ電車に揺られて 

約5時間の歩行の後、ついに「欅平駅」に到着。

懐かしの、観光客でにぎわう地に戻ってきました。

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ここからは観光用の「トロッコ電車」に乗って、宇奈月温泉駅まで移動します。

乗車時間はなんと1時間。15分くらいかと思っていたら意外とたっぷりあります。

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宇奈月ビールで乾杯

私はまだビールの魅力が分からないのでちょっとだけ。(笑) 

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トロッコ電車から眺める景色。

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宇奈月温泉駅からは、業者に回送してもらった車で帰路につきます。

途中、サービスエリアにて夕飯をとり、22時自宅に到着しました。

まとめ 

念願の「黒部峡谷」は最高に、魅力たっぷりの場所でした。

テレビを見て知ってから、ずっと憧れていた場所。

行くことができて、良かったです。

下ノ廊下には歴史が詰まっており、本当に深い場所だなと感じました。

ウィキペディアを読むと詳しい背景を知ることができます。

ぜひご一読いただければと思います。 

日電歩道 - Wikipedia

水平歩道 - Wikipedia

「下ノ廊下」は危ない場所 

下ノ廊下は美しい場所ですが、一歩間違えれば即死の非常に危険な場所です。

特に体力は必要不可欠です。平坦だから大丈夫ということは決してありませんでした。

・黒部ダムから阿曽原温泉小屋までは距離が長い。体力が無いと日没過ぎてしまう

・下ノ廊下にはエスケープルートなし

・ロングコースなので運動不足だと高確率で膝を痛める 

今回行った時も、18時過ぎに阿曽原に到着したグループや、怖がってしゃがみこんでいた女性の方もいらっしゃいました。

行く前の下調べは必須

それは、ここ「下ノ廊下」だけに限らず、全ての山において言えることではありますが…。

本当に自分のレベルに適しているのか?をしっかり吟味しなければ、と思います。

私は今回、先輩に頼りっきりで自分で下調べを全くしませんでした。

多分それは、マズい事です。

本当にいざとなった時に何もできないし、このままじゃ独り立ちもできないと思います。

これからは連れて行ってもらう立場であっても事前調査はしっかりしておきたいです。

日本最高の秘境

黒部峡谷はとても綺麗で、歴史も楽しめる素晴らしい場所でした。

簡単に行くことはできませんが、そういう場所があるということだけでも広めていきたいです。

 

2019・11・27追記

新たに、下ノ廊下に関する記事をアップしました。

当記事に補完する形で御一読いただけたら幸いです。

yamanchu.hatenablog.com