伝付峠〜蝙蝠岳〜北岳 南アルプス縦走 2/3〔大展望の稜線漫歩〕
10月の連休。私にとって憧れの蝙蝠岳へテント泊にて縦走。
2日目の今日は二軒小屋ロッヂから蝙蝠岳を越えて塩見岳へ。
10月7日(日)
5:20二軒小屋ロッヂー5:50蝙蝠岳登山口ー9:40徳右衛門岳ー12:25蝙蝠岳ー14:30北俣岳ー15:00北俣分岐ー15:35塩見岳15:50ー16:15北俣分岐ー17:00幕営地
前回の続きから。
二軒小屋ロッヂ〜蝙蝠岳
夕食をとったら19時頃就寝。 夜は目が冴えて眠れなかった。
やっとうとうとしてきたのは、明け方。実質2時間くらいしか眠れなかった。
蝙蝠尾根
翌朝は5時20分出発。まだ暗いのでヘッドランプを点ける。
林道を進み、「蝙蝠岳登山口」に向かう。
大井川の東俣、西俣という分岐を西俣方面へ入る。
ほどなくして、蝙蝠尾根登山口が現れた。5時50分登り始める。
初めから急登だ。あまり張り切るとバテてしまいそうなので、一定のペースを保ちながら足を動かす。
30分程で、蝙蝠尾根の末端に乗っかる。ここから少しの間は傾斜が落ち着き、平らな尾根を進むが、すぐに登りに差し掛かる。
6時40分、中部電力管理棟の横を通過。山の中に突然立派な施設が現れ驚く。
ここは展望が開けていて、見事な荒川岳が見えた。
ハシゴを登り、再び単調な樹林帯歩きが始まる。
さて、結構登ってきただろう、と思ってGPSを確認してみる。まだまだ下の方だった。
「蝙蝠尾根はとにかく長くて大変。」という話は聞いていたが、まさにその通りだと思った。
風は少々強くて、針葉樹がキシキシと音を立てている。そのうちポキっと折れてこちらに向かって倒れて来ないかとヒヤヒヤした。
徳右衛門岳
9時40分、徳右衛門岳に到着。
あまり山頂らしい雰囲気のない樹林に囲まれた場所だった。
10分程休み出発。蝙蝠岳まで、まだまだ距離がある。
倒木だらけの尾根
ここから、倒木が目立ち始めた。おそらく2018年9月にあった台風24号「チャーミー」の影響だろう。あまりにも多すぎて突破するたびに体力を消耗する。
正面を向くと、蝙蝠岳と思われるピークが見えた。
気持ちがはやる。樹林はなく、砂とハイマツのピーク。
早くあそこへ行きたい。最高の展望が広がっているに違いない。
長く続くアップダウン、樹林帯に疲れてきた頃、そのちらりと見える蝙蝠岳に励まされた。
さて、あともう少し頑張ろう。
最高の展望
そして、ついに樹林帯を抜けた。
前に、右に、左に、展望が広がる。
後ろを振り向く。遠くに富士山が見える。
まだ山頂についたわけではないが、その雄大な360度のパノラマに感動した。
今まで長い樹林帯を歩いてきた分、喜びが大きかった。
ザックを降ろし、休憩する。
最高の天気だ。風は冷たく吹いてはいるが、稜線であるからこのくらい仕方ない。
ちょうど今、台風25号「コンレイ」が日本海側を東進しているはずだ。
今回の山行では強風による影響が心配だったが問題なかった。
しばらく景色を堪能してから蝙蝠岳を目指す。
最高の稜線漫歩だと思ったが、蝙蝠岳まではまだ登りが続く。
徐々に身体に疲労が溜まっていくのを感じる。
すでに今日の行動時間は6時間が経過している。本日の幕営予定地はまだ先だ。
自分なりに、補給をこまめにとったり、ペースを抑えたりして、なるべく疲れないように慎重に歩く。
憧れの蝙蝠岳
12時25分。憧れの蝙蝠岳山頂に到着した。
山が好きになって3年目。まさか自分が本当にここに来てしまうとは夢にも思わなかった。感激が込み上げてくる。
山登りを始めたころ、先輩が「南アルプスを一人で縦走出来たら一人前の山ガールだね。」と言っていたのを思い出した。
あの頃は、そんな難易度の高いこと、あと10年経っても出来ないだろうなぁと考えていたが、今まさにそれを実践している自分がいる。自分で自分にびっくりだ。
あの頃から私も少しは成長したのだろうか。
蝙蝠岳〜塩見岳
あまり長居も出来ない。蝙蝠岳に別れを告げて、塩見岳へ向けて縦走路を進む。
途中でハイマツ帯を通過する。
ピタリと風がやみ、ジャケットを着た体が急に暑くなってくる。
脱いで体温調整。森林限界へ出ると再び風が吹き始めた。
北俣岳
14時25分、北俣岳に到着。地形図ではなぜか山名表記がない。
実際、山頂には標識が無かった。
北俣分岐
北俣岳分岐に到着したのは15:00ちょうど。
時間がなければ塩見岳を諦めようかと思ったが、まだ時間があるので、空身で塩見岳をピストンする。
分岐にザックがデポされているのが気になった。
今まで人に会わなかったからこの持ち主もきっと塩見岳をピストンしているのだろう。
塩見岳
15時50分。塩見岳山頂は賑やかだった。たまたま居た方が写真を撮ってくれた。
一人で歩くのも楽しいが、人と挨拶をかわし、お話をするのも楽しい。
謎のザック
お別れをして、元来た道を引き返す。
分岐へ戻って来たのは16時15分。ふと見ると、まだザックがデポしてあった。
そういえば、塩見岳にはこのザックの持ち主らしき人はいなかった。どういう事だろうか?
持ち主は一体どこへ・・・?
が、人の事を考えるよりも自分の事だ。日没はもうすぐ迫っている。
幕営
今日最後のミッション。日没までに、諸々の作業は無事完了。
寝袋に潜りながら、アルファ米でレトルトカレーを食す。
山と高原地図と登山計画書を見比べ、明日の計画を確認。
明日は、絶対に夜明け前から行動しよう。そう決めて就寝。
目が冴えて眠れない。
思い出したのは、北俣分岐にあったザックの事だった。
そういえば、こちらの縦走路でも人に会わなかった。
というより塩見岳の東側では人の気配を全く感じなかった。
あれ?おかしい、蝙蝠岳方面にも居ない、ここにも居ない、塩見岳にも居ない、それだと辻褄が合わないのではないか?
そんなことを考えていたら急に怖くなってきた。
もし明日、人に会ったらそのことを打ち明けてみようと思った。
〔続く〕