Wakaの週末ハイキング- 山の歩き方 -

主に長野県、山梨県、静岡県の山を歩いています。

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伝付峠〜蝙蝠岳〜北岳 南アルプス縦走 1/3〔ルートロスと滑落〕

10月の連休。本当は涸沢へ行く予定だったが事情により中止。

しかし、せっかくの4連休、さてどうしようということで、私が山登りを始めてからずっと憧れていた蝙蝠岳へ行ってみることにした。さらに北岳まで足を運んでみることに。

アプローチの伝付峠では苦戦した場所もあり、反省も含めてかなり内容の濃い4日間となった。

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 日 時  2018年10月6日(土)〜10月9日(火)

山 域  南アルプス 蝙蝠岳(2,865.1m)、塩見岳(3,047.3m)、

           間ノ岳(3,189.5m)、北岳(3,192.5m)

目 的  憧れの「蝙蝠岳」へ登る

コース

10月6日(土)

7:5身延駅ー8:16伝付峠入口ー9:25田代発電所入口ー(9:50ルートロス10:20)(10:20ルートロス11:40)ー11:55廃屋の肩ー13:10東京電力管理小屋ー14:20出合ー15:50伝付峠ー展望台(往復10分)ー16:50二軒小屋ロッヂ

10月7日(日)

5:20二軒小屋ロッヂー5:50蝙蝠岳登山口ー9:40徳右衛門岳ー12:25蝙蝠岳ー14:30北俣岳ー15:00北俣分岐ー15:35塩見岳15:50ー16:15北俣分岐ー17:00幕営地

10月8日(月)

4:25幕営地ー5:30北荒川岳6:00ー7:10新蛇抜山ー8:25安倍荒倉岳ー8:50熊ノ平小屋9:10ー11:20三峰岳ー12:20間ノ岳ー13:45北岳山荘ー15:15北岳15:40ー16:20北岳肩の小屋

10月9日(月)

5:55北岳肩の小屋ー6:20小太郎山分岐ー7:30白根御池小屋ー9:00広河原山荘

標高差  2,694m

累積標高 (上り)5,815m・(下り)4,803m

天 気  晴れ

人 数  1人

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国土地理院地図(YAMAPログ)

事前準備

今回、行くにあたって、最も心配していたのが「伝付峠」だった。

出発する数日前、情報収集をしていたら、早川町のホームページに伝付峠「全面通行止め」のお知らせが・・・。

登山道情報 | 早川町役場

ここが通過できないと今回の計画はお流れになってしまう。

伝付峠を最近歩いている人の情報を探してみるが有益なものがない。

とりあえず行けるところまで行って、無理なら引き返し、バス停から奈良田温泉へ向かって、笹山にでも登ってこようというサブプランを立てた。

そしてギリギリまで悩んだが、今回は「沢靴」を持って行くことにした。

結果、これが大変役に立つことになった。

伝付峠

初日、始発の電車に乗り身延駅へ向かう。

身延駅から早川町乗合バスに乗車し、伝付峠へ。

途中、私の他に3人の登山客が乗り込んだ。1人は身延山へ。もう2人は伝付峠で降りなかったので、きっと奈良田温泉から笹山へ登ったのだろう。

伝付峠入口バス停からひたすら林道を進む。

心配のこえ

ちょうど工事中でダンプがやたらと通っていた。なるべく端っこを、目立たないように歩いたのだが、工事のおじちゃんたちに声をかけられる。

みんな、心配する声だ。

「1人で来たの?」「伝付峠は熊やイノシシが出るよ。」「橋は全て無くなっているかもしれないよ。」「台風でかなり荒れているよ。」「ここには戻ってくるの?」

登山届けを出している事、計画書は先輩2人に見せていること、熊にあったことがあること、沢靴を持っていること、無理だったら引き返すつもりだからと色々説明する。

どれだけ説明しても、心配そうな顔が消えることはなかった。

このまま北岳へ向かうのでここには戻らないと伝えたら、「気をつけて行ってきてね。」と見送ってくれた。

何度もそんな会話を繰り返しながら先へ進むが、いよいよ人の気が無くなってくる。

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田代発電所手前。伝付峠の入り口。

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林道の終わりも近い

田代発電所を過ぎたら、1人だけの河原歩きとなった。

ルートミス

赤テープを目で拾いながら進んで行く。

途中、赤テープが途切れて、目前にはごっそりとえぐれた場所が。

台風で登山道が流されてしまったかのように見える。

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目印が消失した場所

ここで一度ヘンテコな方向に進んで30分ロスしてしまった。

全く真逆の方向、正規ルートには絶対に戻れない、どん詰まりに向かって登って行ってしまった。

今考えても何を持って進んだのかが分からない。本当に自分はバカだったと思った。

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左手に見える沢を登ってしまった。

 再び戻ってくるが、やっぱり目印が見当たらなかった。

GPSで改めて確認する。スマホの小さな画面ではパッと見て正しい場所にいるように見える。もう少しGPSを拡大したい所だったが、圏外だった為に、拡大した地図を読み込めなかったのが悔やまれた。

まだ、この時点では、自分では集中しているつもりだったが、まだまだ緊張感が足りていなかったと思う。ここで、もう少し時間をかけて慎重に現在地を確認するべきだった。本当に詰めが甘かったと思う。

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山旅ロガー

 

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少し歩くと大規模な崩落地があった。

もしかしたら、ここが登山道だったのかもしれない。と勘違いをしてしまった。

巻くために土砂崩落の左側斜面を登ることにする。

かなりの急登だ。掴む岩や枝がぼろっと外れたり、安心できる場所が少ない。

ふと、土砂崩落の向こう側を見ると、なんと、立派な鉄パイプの登山道があるではないか。

一目見てしまうと、どうしても登山道に戻りたくなってしまう。

土砂崩落地を少しトラバースしてよじ登れば登山道復帰だ。

そう考えると、今こんな急傾斜で時間をかけて登っているのが急にバカらしくなってきた。ここも上まで登り切れば登山道復帰できると思うが、さらによじ登っていく気になれなかった。

実際にはこの後の私の行動が、「最も危険な行動」だったことを身を以て知ることになる。

無謀なこと

慎重に足を進め、土砂崩落の途中までトラバースをする。

崩落斜面は、てっきり柔らかいものと思っていた。キックステップを決め込めば簡単に歩けるものかと・・・。

しかし実際はそんなに甘くはなかった。

完全に硬い砂の斜面。足元をガリガリ削るが安心できる足場が作れない。

おまけに手がかりもなし。

ふと下をみる。落ちても多分途中で止まってくれる、とは思う。死ぬことはない、けど落ちるのは怖い。

慎重に進み、自分の150センチほど上方に登山道が見えた。後少し、ここを登れば・・・。

しかし、よじ登るにはどうしても不安定すぎる場所だった。

今ここに張り付いているだけでも結構な集中力を必要としている。

色々と試行錯誤している時、その瞬間は訪れた。

手と足が、今にも斜面から滑りそうな感覚。

やばい、落ちる。自分は必ず落ちるだろうと悟った。

そして本当に、ザザザザーーと滑落した。

そのままの姿勢で、うつ伏せのまま足から滑っていく。

すごいスピードで標高が下がっていく。「止めないと!」と思って手当たり次第に、飛び出している木や岩に捕まろうとするが、弾かれたように手元から遠ざかっていく。そのうちピタリと勢いが止まった。

上を見ると、15m程は滑っただろうか。

止まってくれてよかった。助かったのは神様のおかげだと思った。

幸いにも私の滑った場所は、左よりの場所だった。

 崩落地のど真ん中に落ちたら戻るに戻れず絶望的だった。

家族の顔を思い出して、ひどく申し訳ない気持ちになった。

顔も体も土まみれだったが、大きな怪我はしなかった。

手のひらに切り傷、それと帰宅後に顔に切り傷ができているのに気づいたくらいだった。

登山道復帰

なんか精神的に疲れてしまった。

これから先どういう行動をすればいいのだろう。

考えるのも疲れる、気のすむまで、この場所でぼーっとしていたかった。

でもそれをしてしまったらいよいよ終わりだ。

働かない頭を無理やりふるい起こす。

時間は11時、予定より約1時間遅れ、まだ午前中であることに救われる。

まず、第一にトラバースは諦める。

相変わらず、目と鼻の先に登山道が見えているが、挑むのはバカだろう。

神様が二度目は助けないぞと言っているような気がした。

すると、左側斜面を登るか降りるか?の判断をしなければいけない。

降りるのも一苦労だし、あと少し登れば、尾根上に乗り上げる。いよいよ登山道に復帰できるかもしれない。

でもそんな予測がそもそも間違っていて、もし登山道がなかったら?不安がよぎるが、まだ午前中だ。

最後の頑張りを見せよう。もしダメだったら大人しく降って、諦めよう。

気持ちを入れ替えて、登りにかかる。慎重に。ゆっくりだが、確実に高度をあげる。

こちらも不安定な急傾斜で気など抜けないし、テント泊装備には辛い。

しかし先ほどのトラバースと違って、まだ手に負える場所だったんだと今更強く思った。

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 すると、上方に黄色いロープが、赤テープが、あるのが見えた。

そしてついに、綺麗な登山道へと合流した。

良かった。本当に良かった。無事に突破した・・・。

平らな場所を探してザックを下ろして、小休止。おにぎりを食べる。

横には崩落現場がある。

私のいる登山道はそちらへ伸びているが、途中でごっそりと寸断されている。

足元には矢印の書かれた石が置いてあるが、その先が消失していた。

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崩落地上部の様子

崩落地の上部はナイフエッジとなっていて、その上にロープが渡っている。よく観察してみるが、もしかしたらこのリッジ上を通過しなければいけないのだろうか?

全面通行止めとなっているのはこの場所が原因?

先ほど必死の思いで登山道に戻っていたとしても再びこの恐ろしい場所を渡り返さなければいけなかったのか・・・?

それこそ完全に馬鹿らしい。そう考えると、やっぱりあそこで滑落してこちらを直登して良かったのかもしれない。

もう少し調査して、もっとも安全な正規ルートを見出したいところだったが、疲れきっていたし、難所を突破できた今となっては、もうそんな事はどうでもよくなってしまった。

しかし、私の進んだルートはアホなルートであることに変わりない。まずは登山道を見落とさずに歩くこと、で、例の崩落地に遭遇し本当に進めなくなってしまったら、引き返して諦める。

こうするのがもっとも安全で正しかった。本当に大バカものだった。生きてて良かった。

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帰宅後地図を拡大して確認。いかに私が馬鹿な場所を登っていたかが分かる。

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看板、踏み跡があることに安心する。

廃屋のある肩

12時に廃屋のある肩へと到着。

相変わらず計画より1時間遅れている。このままいけば二軒小屋ロッヂへ着くのは17時か。

おそらく一番の難所は越えたであろうから、予定通り二軒小屋ロッヂへ向けて進む。

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廃屋のある肩

登山道を歩くというのは、本当にありがたいことだ。

先ほどまでの苦労が嘘のようにサクサクと距離を稼ぐことができる。

渡渉

初めの渡渉ポイントへ到着する。

対岸にロープが渡っているのが見えるが、橋はかかっていなかった。

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渡渉ポイント

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対岸に登山道が続いている。

上流へ歩き、飛び石できそうなところを探すが、私のジャンプ力では到底無理そうだった。先ほどのようないい加減で愚かな失敗は許されない。

とにかく一番の安全策をとることとした。

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飛び石不可能と判断する。

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モンベルの沢足袋に履き替えた。

持ってきた沢靴に履き替えてじゃぶじゃぶ進んでいく。

そのまま、出合まで沢靴で進むこととした。

もう絶対に間違えない。集中力を最大限に発揮して進んでいく。

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時折登山道にも小さな沢が出来上がっていた。

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橋がかかっている。ここが崩れたらおしまいだ。

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2段の滝

見事な2段の滝。「山と高原地図」にも記載があった。

バス停からここまでの平均コースタイムは3時間55分。

私はここまでで4時間40分も掛かってしまった。

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木の橋が多い

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渡渉。右上の赤テープに向かって。

どう考えても渡渉しなければいけない場所に目印がある。

台風の影響で沢が増水しているのだろうか?

水深は、深くて膝上だった。

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東京電力の管理小屋

てっきり今日は小雨が降るものと思っていたが、空には青空が広がっている。

あの崩落地を越えてからは、爽やかな気持ちの良い山歩きだった。

人も居なくて、静かで私好みの良い場所だ。

あの場所が崩れてしまって全面通行止めになっているのなら非常に勿体無いと感じた。

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青空が広がる。

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渡渉。基本的に青ペンキを拾いながら進む。

その後も渡渉が何箇所があったが特別苦労する場所はなく、出合に到着した。

おそらく登山靴だったら、もう少し考えて歩かなければいけなかったが、沢靴だったのでかなり楽に進むことが出来た。

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ここは少し分かりにくかった。

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沢登りをしている気分だ。

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伝付峠の取り付きに到着。

緩やかな登り

靴を履き替えて伝付峠の登りにさしかかる。

地形図をみる限り、かなりの急登を予想していたが、つづら折りの、緩やかで非常に登りやすい道だった。

昔は「伊那街道」と呼ばれ、山梨〜長野間の荷物を運ぶ峠道として利用されていたそう。昔は馬も歩いていたのだろうか?

それにしても、こんな場所に道を作るなんて、昔の人はすごいと思った。

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爽やかな森林浴だ。

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熊笹を駆け上がる風が涼しい。

クマ

道中、ガサガサっと音がした、下の方を向くと、クマが一匹こちらを振り返っている。

バッチリ目があった。スマホを取り出し写真撮影、その後、こちらから立ち去った。

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残念ながらブレブレだった。

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ここで砂まみれになった顔を洗った・・・。

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熊笹が増えてきた。

到着

いよいよ伝付峠へと到着した。

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ついにここまで到着した。

ザックをデポして展望台へ立ち寄る。蝙蝠尾根上部には雲がかかっていた。

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展望台からの眺め。雲が掛かっている。

さて、あとは二軒小屋ロッヂへ向けて下るだけだ。

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二軒小屋ロッジの分岐

よく整備されて歩きやすい。ペースをあげて下る。

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快適な登山道

二軒小屋ロッヂ

ついに二軒小屋ロッヂへ到着した。

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今日の行程が無事に終了した。

ロッヂへ入ろうとしたら、鍵がかかっていた。

とりあえず勝手にテントを設置していたら、ロッヂの方が帰ってきたので受付をしてもらった。

二軒小屋ロッヂまでの林道送迎バスが台風による土砂崩れの影響で当分の間運休している事は知っていたが、二軒小屋ロッヂも明日から数日休業になるらしい。ロッヂ内にはお客は誰もいなかった。

後から、蝙蝠尾根を降ってきた男性の方がきて、テントは2張となった。

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がらんとしたテント場。

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今日のご飯、中華丼。

夜は、一番重量のあるレトルト中華丼から。

特別美味しくも無い。あまり食欲も湧かない。

ゆっくり時間をかけて食べて、就寝・・・。
 

[続く]

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